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「知駅財産権法の精神」を理解するために、当研究所では「三方よし」というキーワードを掲げました。

近江商人の「三方よし」

 =売手よし、買手よし、世間よし=


「三方よし」が小倉氏によって叫ばれた時代

「三方よし」とは、経済学者小倉榮一郎氏が、自身の著書の中で叫び続けた言葉ですが、小倉氏が「三方よし」を叫んだ時期(1988〜1992年)の日本を振り返ってみました。   

1988年の流行語は「シーマ現象(流行語部門銅賞)」
1989年が「24時間タタカエマスカ(流行語部門銅賞)」   
1989年からの公定歩合の引き下げにより、1990年に入って株価が下がり、地価が下がりはじめます。
1990年の秋頃から、過度な不動産投資による企業破綻が多発し、金融機関や証券会社のルーズな経営実態が明るみに出始めます。
1990年の流行語「バブル経済(流行語部門銀賞)」に対する人々の期待が「ファジィ(新語部門金賞)」 になり…、1991年に「損失補填(流行語部門銅賞)」が行われるようになります。                      1992年(小倉氏ご逝去の年)の流行語は「カード破産(新語部門銀賞)」と「複合不況(表現部門金賞)」で、
1993年版の『現代用語の基礎知識(自由国民社)』には、最新キーワードとして「コーポレートガバナンス」があげられるようになりました。ここでは、「コーポレートガバナンス」について次のように解説されています。   

=引用=
株式会社はリスク分散によって、広く株主の出資を募り、巨大な資本を動員し、発展した。責任の所在があいまいになり、さらに所有と経営の分離によって経営者は独立した 権力となり、だれが経営責任を負うのか、わからなくなる

この問いに対するヒントが、小倉氏の「三方よし」に存在するのではないか、と私は思うのです。          

                               ……小倉氏が「三方よし」に込めた思い

小倉氏が亡くなってから10年後(2003年という年)…

2003年版の『現代用語の基礎知識』に、「フィランソロビー/メセナ」という語の解説の中で、「CSR」の欧文字が「企業の社会的責任」の訳語として登場しました。   
2004年版には「経営問題用語の解説」の章のトップに「企業の社会的責任(CSR)[Corporate Social Responsibility]」の語 が登場します。                                          
                                      …「CSR」とは?

「CSR」の語の広がりと共に「三方よし」の理念が評価されはじめたのですね。
「三方よし」について書かれた小倉氏の著書が再編集され『近江商人の理念‐近江商人の家訓選集‐』(サンライズ出版、2003年)として出版されます。その本(2009年12月25日発行の初版2刷)の裏表紙に下記の記載を見つけました。

全て我がことのみを思はず、其の国一切の人を大切にして、私利を貪ることなかれ…。
(「三方よし」原典と言われる中村冶兵衛遺言集より)  
                      

近江商人の経営理念としての「三方よし」という語は、この本が出版された2003年頃に広まったものなのでしょう。   
私が「三方よし」という語を耳にしたのもこの頃でした。
「工業所有権」という語が「産業財産権」に変わり、「知的財産」という語が新たに登場した頃でしたから…。   


知的財産権制度における2003年とは?

2003年という年は、「知的財産」という語が『現代用語の基礎知識』に初めて登場する、記念すべき年もあります。  
これは、「知的財産」というものが、以前から使用されている「知的財産権」とは異なる概念で捉えられるようになりつつある時期であった、ということを示しております。   

「CSR(企業の社会的責任)」の語が広がりと時を同じくして、「知的財産」の意義が認識されるようになっていった、ということになります。   

「CSR」と「知的財産」との間には、何らかの関係があるのでしょうか?   
「CSR」と「三方よし」の関係を理解することによって、それが解き明かされるような気がしませんか?